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ノーベル賞の面白い話

2012.12.15.Sat.14:37

毎年誰が取るかで世界中で予想が行われるノーベル賞。実際にストックホルムに行き、ノーベル賞を取材した皆神龍太郎さんに「ノーベル賞の面白い話」を聞きました。みなさんがあまり知らない愉快な話があるんです。



■受賞者の名前が漏れたのは1回だけ

――ノーベル賞って毎年、今年の受賞者は誰だろうって話題になりますよね。

皆神さん ノーベル賞って1901年からもう100年以上もやってるんですけど、受賞者の名前って、1回しか事前に漏れたことないんですよ。

――たった1回ですか。

皆神さん 秘密厳守でやっているので、なかなか漏れないんですが。2010年の医学生理学賞受賞者(ロバート・エドワーズ先生)の名前が漏れてしまったんです。記者(インゲル・アッテルスタム氏)の取材にポロっとしゃべってしまった人がいたんですね(笑)。

――ただ100年で1回しか漏れてないのはすごいですね。

皆神さん 世界中で予想はしますが、毎年発表の日までわからない仕組みになっています。発表の日の午前9時に選考委員が会議室に集まって最終決定・承認をして、全世界への発表する前の30分ぐらいの時間で受賞者に直接電話するんですよ。

――慌ただしいですね(笑)。時差とかは考えないんですか?

皆神さん 考えないですね(笑)。だから山中先生みたいに「洗濯機を修理してたんだけど……」みたいなことが起こるわけです。

■座面の裏にノーベル賞受賞者のサインが!

皆神さん 2002年にオープンしたノーベル博物館のカフェに行くと面白いものが見られますよ。

――何でしょうか?

皆神さん そのカフェでは、普通の黒いいすを使っているんですが、その座面の裏に各年の受賞者のサインの寄せ書きがあるんです。私が行った2008年には、その内の1脚の座面が展示されていました。2002年のいすで、田中耕一先生のサインもありました。

――そのいすはカフェで普通に使っているんですか?

皆神さん まったく普通に使っているんですよ(笑)。本来であれば博物館で展示されていてもいいような貴重な物だと思うんですが。

――なぜそうしないんでしょうか?

皆神さん 博物館の責任者に聞いてみたら、「だって、たくさんあるからいいんだよ」って消耗品みたいなこと言ってましたが(笑)。ノーベル賞って格式ばってるイメージがありますけど、その一方で非常にフランクな一面があるんです。あまり偉そうにしないというか。その精神の表れじゃないでしょうか。

――2002年のいすだけ飾ってあったのはなぜなんでしょうか。

皆神さん 田中耕一先生のサインがあるからじゃないでしょうか。スウェーデン王立科学アカデミーは「田中耕一先生を選出したこと」に誇りを持っていると思います。「あなたたちは田中さんを知らなかったでしょ? でもわれわれは彼の功績を見逃さなかった」という自負ですね。

■本物のメダルはどーれだ?

皆神さん 式の時にノーベル賞メダルを授与されますが、式の後の晩餐会などに出る際に、メダルを持っていると邪魔なので、いったんノーベル委員会に戻すんですよね。

で、帰国する前にメダルを再び受け取りに行くわけなのですが、その際にちょっとしたクイズが出るんです。受賞者の前にメダルが3つ並べられるんだそうです。「本物のメダルはどれでしょうか」クイズです。

――えっ?

皆神さん 本物が1個とレプリカとチョコレートが出るらしいんですよ。

――チョコレートですか?

皆神さん 金貨の形をしたチョコレートってあるじゃないですか。チョコレートの周りを金紙で覆ってある……あれのノーベル賞メダル版があるんですよ。ちなみにお土産で売ってるんですけどね(笑)。

――その3つが受賞者の前に並ぶんですか?

皆神さん 茶目っ気でやってるんでしょうけどね。「本物はどーれだ?」で当たったら持って帰ってもいいと。もちろん外れても持って帰れますけどね(笑)。

日本だったら、そんなことしてノーベル賞を受賞する先生方が怒ったりしたらどうするんだ、とか言い出す輩がいて、絶対、やらないでしょうね。でも実際は、天下のノーベル賞の大先生方も、結構喜んで「本物探し」をやられるみたいですよ。

――チョコレートはすぐわかりますよね。レプリカと本物はわかるんですか。

皆神さん 持てばわかるハズです。重さが違うので。でも2010年に受賞した鈴木章先生は間違えちゃったそうですが。

■日本人はめっちゃ買うお土産

――さっきのチョコレートメダルはちょっとほしいですね。

皆神さん 有名なお土産ですよ。ノーベル賞のメダルと比べると径がちょっと小さいのですが。1個10クローネ(1クローネ=約14円:約140円)で、スウェーデン内でもノーベル博物館でしか買えません。

――いいお土産ですね。

皆神さん 2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授は600個買って帰りました。2002年の田中耕一先生もたくさん買って帰ったようですよ。

――気持ちはわかります(笑)。

皆神さん 日本人がすごく買うので、販売所の表記には「10クローネ」って日本語でも書いてあります(笑)。

■ノーベル賞の面白いとこ

皆神さん あとノーベル賞受賞者がやらされる秘密の儀式があると言われています。

――どんなものですか。

皆神さん ストックホルム大学で学生主催で行われる『ルチア・ディナー』という会があるんです。ノーベル賞受賞者を招いて行われますが、そこで『かわいいカエルちゃん』というスウェーデン民謡に合わせて、受賞者が「カエル跳び」をするという一種の儀式が行われるらしいんです。

――らしい、というのは?

皆神さん 入れるのが受賞者オンリーで、メディアお断りなんで入れなかったんですよ(笑)。でも本当に行われているようです。

――そういうユーモアが入ってるとこが面白いですね。

皆神さん そうですね。ノーベル賞っていうのはいちいちノーベルの遺言どおりに運営されていて、もう100年以上の伝統を持っています。私も取材に行く前は「固い賞、固い式」なんだろうなと思っていました。

なにせノーベル委員会主催の晩餐会では、取材記者にも燕尾服を着せるドレスコードがあったりしますからね。でも取材してわかったのは、格式があって、歴史の伝統と重みを自負してるんだけれども、決して偉ぶってないってことです。そこにとても感心しました。

ノーベル賞の面白い話、いかがだったでしょうか。筆者など、取れないまでも、取材で一度行ってみたいなあと思いました。

(高橋モータース@dcp)

【写真の説明】
本物のノーベル賞のメダルとお土産のチョコレートを並べたところ。ノーベル賞受賞者しか撮影できないような写真(笑)。(提供:皆神龍太郎氏)


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